FUMIO YASUDA「SORA」

FUMIO YASUDA「SORA」に寄せて

安田芙充央さん。
とても尊敬する作曲家でありピアニスト。いや尊敬というよそよそしい言葉で語ってはいけない。
僕は昨年リリースされた『凛』という安田芙充央作品集で2台のピアノに参加させて頂き、日本プロ音楽録音賞「ベストパフォーマー賞」という素晴らしい賞を受賞した。大好きな先輩ピアニストであり、おこがましいが同志であり、友人であり、しかし遠い存在の偉人だ。そういった意味で本当に尊敬している方だ。
のっけから熱くなってしまったが、冷静にせねば。

安田芙充央さんの音楽との出会いは、もう15年くらい前かもしれない。僕は写真を撮るのが趣味で見るのも好きだ。森山大道、中平卓馬、細江英公と共に荒木経惟アラーキーさんも好きだった。そんな訳でArakinemaのDVDを手に入れその写真と共に物凄い世界観で作品に凄みというか異彩を放っていて虜になったのが、「安田芙充央」という名前だった。それから月日は流れ、コロナ禍の頃Facebookで友達申請が来た。その名は安田芙充央さん。驚きと嬉しさで舞い上がってしまった。それを機に、その頃やっていたyoutube「譚歌チャンネル」にゲストとしてお招きする事となり初対面のその日に共演を果たした。それは夢のような時間だった。その後、とんとん拍子に話が進み2台ピアノでレコーディングをする事に誘われ、『凛』が生まれた。そのレコーディングは綿密に書かれた非常に高度な技術がなければ弾くことができないような孤高の曲の数々。本当にスケッチだけで自由にやって良い曲など、初めての経験ばかりでやり甲斐しかないし、全てを録音に注ぎ込んだ貴重な時間だった。おっと、また熱くなっている。いかんいかん興奮して動悸が早まっている。

そんな安田芙充央さんの新作が手元に届いた。
FUMIO YASUDA「SORA」
POURQUOI LABEL
POUR-1012

メンバーを見ると、
Fumio Yasuda : Piano, Melodica, Keyboards, Percussions
Joachim Badenhorst:Vocals, Voice, Clarinet, Bass Clarinet, Tenor Sax
Akimuse:Vocals
Nobuyoshi Ino:Acoustic Bass
Dogen Kinowaki:Flute, Alto Flute
Takako Hagiwara:Flute
Asian Art Strings:Strings (Violin I, Violin II, Viola, Cello)

曲のリストは、
1. SORA
2. Sky Lament
3. Fitari
4. Blady
5. Intolerance
6. Lost Era
7. Gig on the Stairs
8. Light in Ruins
9. A Mom’s Place
10. Mahoroba
11. Lucrezia

となっている。
参加ミュージシャンは2019年のアルバム「Forest」のメンバーに2本のフルートと弦楽四重奏が入っている。
「Forest」のサウンドは極めて繊細で危うい、そして力強く美しく、そして儚い音楽で愛聴していた。

ドキドキしながら1曲目表題の「SORA」。
退廃的な美しさを持つビート、様々なノイズのコラージュ。その影からまさかのJoachim Badenhorstのボーカルと空間を切り裂くようなクラリネットの音。そして安田芙充央のMelodicaとアブストラクトなピアノ。その暗の現生世界には明の浄土世界Akimuseのvoiceとstringsが見え隠れする。混沌の世界。カオス。
地上のノイズが消え、明と暗が徐々に重力を無くしくっきりと姿を濃くし、ゆっくり上昇して行く。やがて天界にだけ存在するかのような観音菩薩が蓮の池の佇む世界観が現れる。

「SORA」は空~KU~とも読める。無我や無常の意を表す。この「無と有、否定と肯定」の対比が壮大に表されているのではないかなと筆者は勝手に解釈して聴いた。
思えばアラーキーさんの作品にも「空」がある。死と生のテーマに根源的に向き合っている。
安田芙充央さんの中にも同じ物があるのだなと思う。そして両者は惹かれあって芸術が突発的にスパークしたのだと思っている。「SORA」というワードはとても安田さんにとって重要なのだろう。

2曲目の「Sky Lament」もそうなのだ。空の哀歌。おそらく「SORA」は「Sky Lament」の異形の曲なのではないだろうか。静かな平穏な和音、メロディーは空に登って行くにつれ狂気を帯びてくるClarinetとのimprovisationの後、テーマが戻って来るが初めのテーマより長2度上げられている。二度と同じ世界には戻って来れない。違う人生を生きる為に。

「Fitari」は2つのFluteとオルゴールのような音とピアノで軽快に弾むように奏でられる。
音階的には殆ど琉球音階だが沖縄色は感じない所が面白い。それはある意味メロディの作られ方が機械的シーケンサーで演奏したように感じられるから。それを人力で演奏している木ノ脇道元さんと萩原貴子さんの技量が超絶だからだろう。


「Blady」とはどういう意味だろう。ポーランド語では「青白い」といった意味があるが。。。
本人に聞くとはぐらかされそうではあるが。もし合ってるとしたらまた安田さんの大切なワードであろう「青」だ。名作「Hevenly Blue」の中の表題曲、大好きな曲「Blue Ruins」、「Blue Era」、「Blue Gallery」などまだあるのではないかな。青空の青とは違う青な気がするのは気のせいか。
この曲はSlow BossaのテイストだがPiano、Clarinet、Bassのシンプルな曲かと思いきや、その裏に低い控えめな音で主張するOrgan、Stringsのアバンギャルドな響きがたまらない変態感を出している。これだな安田さんの美学は。
以前こうおっしゃった事があった。「好きな音楽は、あられもなくロマンチックなもの」
安田さんのロマンティックは甘く危険な香りのする麻薬のようなものだと思う。

「 Intolerance」不寛容。不思議なエレクトロニクスなシーケンスの上でAkimuseさんの気まぐれな女性を象徴したかのように聞こえるvoiceが印象的。女性が不寛容な世間を嘆いているのか、こういうタイプの女性は不寛容だ!と振り回されている男性が嘆いているのか?

「Lost Era」失われた時代。異次元からの響きのようなStrings、Bass Clarinetの叫び、そこに打ち込まれるPianoの毅然とした和音の響き。安田芙充央さんの独壇場。この一見相容れないもののミクスチャー。これだ!The 安田芙充央!

「Gig on the Stairs」はアルバム「花曲」ではErnst Reijseger(cello)とサンプリングされた
Accordionとの自由な会話だったが、そのサンプリングされたパートはPianoに代わり、井野信義さんのBassとJoachim BadenhorstのClarinetの対話となった。

「Light in Ruins」廃墟の中の光。どれくらい昔の事だっただろう。まだこの建造物の中で静かにPianoが奏でられていた平穏な時があった。そして何かの騒乱に巻き込まれ廃墟となってしまった古の建造物に静かに足を踏み入れると、差し込む光の中に昔の平穏が幻のように現れるのだった。そこには長く静かな時間の流れがあった。
こんな想像をさせる安田芙充央さんの曲とPianoのタッチは本当に素晴らしい。

その屋敷にはママがいつもいる場所があった。ママの名前は”Monique”。優しく可憐なママはどこかミステリアスな面もあった。僕にふと見せる横顔には寂しさなのか哀しみなのかわからない表情が薄く滲み出ている。僕はママにふと尋ねてみる。。
こんな物語を想像してしまう「A Mom’s Place」大好きです。

「Mahoroba」安らぎを感じる場所。Flute3声とシンプルなPianoで奏でられる。
こういう淡々と自然のように流れるメロディにも安田さんの優しさ、凛とした佇まいが感じられる。「Song of Nenna」のように。

そして「Lucrezia」 
「Der Kastanienball」というオペラの為に安田芙充央が作曲したアリア。凌辱された美しい王女の嘆きの歌。この悲しくも美し過ぎる曲がPiano Soloで奏でられるとは。アルバム「Hevenly Blue」の中で弦楽オーケストラとSolo Violinで演奏されたバージョンも好きだが、最も好きなバージョンができたなあ。。。以前にこの曲が死ぬほど好きですと安田さんに話した事覚えていてくださったのかなあ。。と図々しいことも頭をよぎる。
単にピアノソロなだけでなくオーケストレーションされたそれぞれのパートが音色の変化を付けながら絶妙な奥行き、陰影を描く。
アルバムの締め括りがこんなに切ない気持ち、込み上げてくるものがあるのに。。すっきりと終われない。そうだもう一度聴かなきゃ!!
安田芙充央さんはご自身の死生観、狂気を帯びたロマンティシズム、センチメンタル。アバンギャルドな精神。優しくも厳しい信念。これらを持って音楽をされている事は実際にヒシヒシと感じる事があるが、このアルバム「SORA」では、それぞれのバロメーターが振り切っている。
明るくハッピーなアルバムでは決してないのに、この気持ちの良い幸福感はなんなのだろう。
自分の深層心理に無意識に語りかけられ、それに気づかされる事によって動揺し、喜びと悲しみの間で悶絶する自分がいる。危ないのに近づきたくなる。甘い毒。理性が吹っ飛んでいく感じ。
これが安田芙充央さんの魔力なのか。
凄いアルバムを聴かせて頂いて、また勇気が湧いてきた。ありがとうございます、安田さん!!!

投稿者 石井彰 : 22:29 | その他 | コメント (0) | -

再スタートの年。

2024年最初の投稿がこんなタイミングになってしまいました。。
これを読んでくださる皆様、どうもありがとうございます。お元気でいらっしゃいますか?

前にも書きましたが、『Quadrangle』 石井彰(p)石井智大(vn,vc)水谷浩章(b)池長一美(ds)
のレコーディングを2月21日に横浜「ランドマークスタジオ」にて行いました!!
メンバー全員のオリジナル曲で構成された渾身のアルバムを録音できたのは念願でした。
さあ、この大切なカルテットで音楽を表現して行こう。自分の理想とする表現、サウンドを自分の体調にあった方法でやって行こう!!

こんな風に順風満帆で滑り出した『Quadrangle』の船出でした。

が、レコーディングの二日後にアクシデントが。。。私は、ある建物内の階段から転落し、重傷を負いました。
詳しくは書きませんが、2回の手術と約40日の入院でした。退院後、なかなか元の生活、体調には戻りませんが、ライブを少しづつ再開できるまで回復して来ています。

入院中は、もし二度と音楽ができない状態になってしまったら。。という不安、漠然とした将来の不安に苛まれましたが、持ち前のポジティブなマインドでリハビリもこなし、復帰できたという幸福感で一杯です。

録るだけ録って、全ての作業が止まっていた『Quadrangle』のレコーディング、昨日から再始動です!!
フォトグラファーの竹下智也氏との打ち合わせ、レコーディングエンジニアの松下真也氏のスタジオでのミックス作業。自分の責任においてやらねばならぬ事は山積み。しかし、これは楽しくやり甲斐のある作業です。
録音した音はしばらくは聴ける状態ではありませんでしたので、スタジオで音を聴いた時に「音は死んでいなかった!自分も生きている!」という感動に包まれました。約3ヶ月の間放り出したままになっていた『Quadrangle』の音はまた動き始めました。前より輝きを増して!!

これまでリーダー作を出していたのは、esat works enterteiment ,Studio TLiveという二つのレーベル、制作会社。全ての事務的作業をお任せしていたので、それを全て自分でやるという責任。人がやれるなら自分もやれる(という無謀な信念)という強い意志を持ってやり遂げる!!!そう思っています。

遅くとも秋までには様々な事を発表できるようにしたいと思います。
皆様是非応援して下さい。
60歳の再スタートです!!

投稿者 石井彰 : 21:36 | その他 | コメント (0) | -

『凛-RIN-』が賞を頂きました!!!

この度「第29回 日本プロ音楽録音賞2023」で、安田芙充央さんの2台ピアノ作品集『凛-RIN-』より「AMESA for Two Pianos」の演奏が、「ベストパフォーマー賞」をいただきました。安田芙充央さんがバーゼル室内管弦楽団に書いたオーケストラ曲を二つのピアノの為に再構築された曲です。この賞は音楽を発表された作品の中から録音エンジニアに対して審査が行われるものですが、毎年その候補作の中からパフォーマーも選ばれるものです。
このアルバムを録音するのに昨年4月と9月に分けて計4日間を要しました。このデュオの試行錯誤に至るまで、youtubeチャンネルでの出会いが無ければあり得なかった事。もっと遡って言うならば、僕は写真家アラーキー(荒木経惟)さんのDVD作品をいくつか見ていたところ、BGMにしてはあり得ないような魔力を感じ、エンドロールに流れる「安田芙充央」と言う名前を心に大切にしまっておきました。
ある日、Facebookにご本人から友人申請が来た時は心底驚きました。安田さんは僕の事を、亡くなったテナーサックスの井上淑彦さんから聞いていたのだと知り、こんな形で縁というのは繋がって行くのかと何かしら見えない力を感じたのでした。

『楽曲は極めて稠密に書いた部分と、まったく即興に任せた部分から成り立っており、その距離感や目の前の音の風景をどう捉えるかが演奏の鍵でありました。単に演奏しただけでは成り立たない音の本質的な流れを、内面から表現できたのではないかと思っております。また、今回の録音を通じて、俯瞰的に見ながらも細部に本質は宿る、ということを思い知りました。両者が独立したパフォーマーとして存在する中で、さらに他者との音の河を見据えていけば、見たことのない風景が静かに広がっているかも知れません。今後は、世界中に一つしかない何かを表現していければ良いと思っております。』(安田芙充央さんの受賞コメント)

僕はジャズでの受賞は初めてのことです。尊敬する安田さんとの初めての出会いから『凛』が作り上げられる過程において多大なる影響、学びがありました。そして吉田美奈子さんとのECHO発足と、この事から始まった音を追求する旅への扉が次々と開いて行くのを日々実感して居ります。

これからも自身の音楽に深みと煌めきを求めて精進して行く所存です。光栄な賞を頂き有り難うございました。そして、この作品のプロデューサー榎本憲男、録音の樽岡大志、調律の早川忠光、カバーフォト撮影の石井智大の各氏に御礼申し上げます。https://sites.google.com/・・・/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0

投稿者 石井彰 : 18:39 | その他 | コメント (0) | -

弥生。


久しぶりにこうしてブログを書こうと思うのも、体と心の冬眠から目覚めつつあるのかなと思うこの頃です。
身体の問題としても、寒さが堪えるのは年々自覚が強くなります。それに加え、年末から2月頭にかけて懸案事項があったため、2月半ばからは少々体調崩してしまいました。

それからも復調出来つつあるのは、春が近づいた事もですが、心身のバランスを取り戻せたからなのかも知れません。心と身体は繋がっており、双方に影響し合うのを身をもって痛感した1月2月でした。

とは言え、これからの人生にとって大切な事の始まりもありました!!
敬愛する作曲家でありピアニストの安田芙充央さんとの2台ピアノによるプロジェクト『凛-RIN-』は、昨年の春からじっくりリハーサルとレコーディング、ミックスを重ね、今年1月25日にプルクワレーベルよりリリースされ、27日のお披露目ライブと共に高い評価を頂きました。

安田さんの作品集である『凛-RIN-』。作品をこよなく愛し聴き続けていたのですが、実際に安田さんとのデュオを経験すると、彼の偉大さや深さ、音楽に対する厳しさを痛感して、自分の未熟さ、小ささを正に突き付けられた様でした。安田芙充央さんはこんな自分をピアノデュオの相手に選んで下さった誇りも折れそうになりましたが、自分は自分にしか出来ない音楽があるはずだと良いwww開き直りで広大な安田ミュージックに飛び込んだのでした。ここが終点ではなく出発点なのだと!!

そしてこの出発点がさらに先へと続いて行くのを示唆する様に、新しいプロジェクトも決まったのです。
ヴォーカリストの吉田美奈子さんとの音楽活動はここ数年でかなり深まったと感じています。今年は大きなバンドである『柊』森俊之(key)石井智大(st)吉野弘志(b)との5人編成ユニット、そして美奈子さんと僕のデュオが中心となる予定でしたが、ここになんと安田芙充央さんとのピアノデュオで吉田美奈子さんと音楽を作って行こうという前代未聞のプロジェクトが誕生しました!!ユニット名も『ECHO』と決まり、5月のBilborad Live YOKOHAMAを皮切りに3つのライブが決定しています。まだリハーサルも始まっていない未知のバンドですが、まさに未知の音が作り出せるのではないかと野望に燃えている3人です。



自分自身の音楽を表現して行くユニットも、『Chamber Music Trio』須川崇志(vc)杉本智和(b)、『Quadrangle』石井智大(vn)水谷浩章(b)池長一美(ds)が二本柱として確固たるものになってきたのも超嬉しい事。オリジナル曲が文字通り「育って行く」のを実感できるのです。これはなかなか感じる事のなかった感覚です。この二つのユニットは本当に楽しく、こういった仲間がいることが幸せでなりません。

準レギュラーバンドとも言える、『12本の弦と5人の男』定村史朗(vn)石井智大(vn)瀬尾高志(b)芳垣安洋(ds)。こちらも僕が音頭を取って始めましたが、もはや誰がリーダーでもない有機体です。ここから『Tales of Another』瀬尾高志(b)芳垣安洋(ds)石井彰(p)というスピンオフ的トリオができたのも昨年の収穫の一つです。

そしてこちらも息の長いユニットになって参りました『Three Wisdoms』小林真由子(箏)定村史朗(vn)。みんなオリジナルをこのバンドの為に作ろうよ!と提案してきたのが実を結びつつあります。この唯一無二の摩訶不思議な編成のユニット、まさに無国籍な音楽を是非聞いて頂きたいものです。


徒然なるままに書き連ねてきましたが、近況報告と決意表明でした。
体調の方はあまり良くなってきてるとは言えず、無理をすると数日間身体が言うこと聞かなくなってしまうのは、病気が進行しているのだなと痛感しています。。。。こういうことに陥らない為にもライブの頻度を大幅に下げて参りますが、まだまだ元気に頑張りますので、どうぞよろしくお願い致します。

投稿者 石井彰 : 20:39 | その他 | コメント (6) | -

Mr.Gary Peacock....



ベーシストのGary Peacock氏が亡くなった。享年85歳。

人は皆死ぬ。悲しいとか残念だとか言う前に、素晴らしい音楽をありがとう。お疲れ様でした。
という気持ちでいっぱいだ。

彼の業績を事細かに振り返るのは、マニアの方にお任せするとして。自分とゲイリーさん(以後ゲイリーさんと表記します)との接点について書いておきます。


あれは1986年10月13日。僕が23歳の頃、3年前に発表された『Keith Jarrett Standards Vol.1,2』に衝撃を受け、1985年のトリオ初来日公演ではあまりの崇高な世界観に打ちのめされ、自分の目指すべき音楽の在り方はこれだ!!と、研鑽に励んでいた頃。2度目のトリオ来日大阪公演が決まり、チケットを取り、何日も前から楽しみにしていた前日、ベーシストの西山満さん(大阪時代のボス。大変お世話になった方)から電話が。「明日ゲイリーさんに会いに行こう!!」

大阪フェスティバルホールでのコンサート前、彼らの滞在先である中島ロイヤルホテル(現リーガロイヤルホテル)のティーラウンジで約1時間、ゲイリーさん、西山さん、そして僕という異例の3人組でのティータイムが始まったのであった。。ゲイリーさんは以前、京都に住んでいた事もあり、関西のベーシストは何かしら関係があったらしい。そして、日本語がペラペラ。だからここでの会話も滞りなく行われたのだ。

この緊張感の中、僕の人生の固定概念を根底からひっくり返す言葉がゲイリーさんの口から発せられた。

『このトリオは音楽を上手くやろうとは思っていません。リスクをあえて侵していくのです。曲が始まると同時に3人で荒れ狂う海に飛び込んで行く。3人とも溺れてしまう事もあるけど、見た事もない楽園に3人同時に辿り着く事もあるのです。音楽でリスクを侵す事を恐れてはいけません。』


まだペーペーのミュージシャンの僕にとって、衝撃的な言葉だった。リスクを侵すって何だ?!今では当たり前のミュージシャンの心得だが、今思ってもKeith Jarrett , Gary Peacock , Jack DeJohnette この3人の繰り広げる音世界は神レベルだ。

記録によれば、この日のセットリストは、
The Wind
Woody'n You
In Love In vain
Autumn Leaves
If I Were A Bell

All Of You
I Should Care
Someday My Prince Will Come
All The Things You Are
When I Fall In Love
Billy's Bounce
I Remember Clifford

大学生のジャズ研でもやる曲のオンパレードだったが、物凄い演奏だった事は今でもハッキリ覚えている。

このコンサート後に、なんとゲイリーさんと飲みに行く!!という、これまたとんでもない経験をしたのだが、
1曲目だけ知らない曲だったので、何という曲でしたか?という僕の質問に対して「The Wind.風ですね〜!ラス・フリーマンの曲です。」と教えてくれたゲイリーさん。物凄く上機嫌で「今日のキースさんの演奏は、unbelievable! 頭が無かった。ここだけだった!!」と胸をトントンと叩いたのでした。

この日の貴重すぎる経験が僕の座右の銘となっていると言っても過言では無い。


このよく年だったと思うが、ゲイリーさんは単独で大阪の「セントジェームス」というライブハウスで、クリニックとライブを行った。ライブはマスターでありピアニストの田中武久さんのトリオにゲイリーさんが入っての物だった。僕は休憩時間に無謀にも、一曲弾かせてください!と直訴し、共演させてもらったのだ。
その時の曲が「Like Someone In Love」。何故この曲を選んだのかは覚えていない。多分、キースのトリオで聴いたことが無い物を選んだのだろう。

僕の斜め後ろに立って演奏していたゲイリーさん。何度も何度も聴いていたあの音が身体で感じる距離から実際に鳴っている、弾いている!!という心臓が爆発しそうな感覚は絶対に忘れない。若僧の分際ながらその時感じたのは、何とも言えない距離感で寄り添い、ダンスしているかのようだった。


思えば僕が大好きなピアニストは皆、ゲイリーさんを選ぶのだ。

Bill Evans
Keith Jarrett
Paul Bley
菊地雅章
佐藤允彦


当然だなと今では思える。あんなベースはゲイリーさんしかいないから。

Keith Jarrett Trio で初来日の時の東京公演の映像。2部の2曲目「Prism」。キースのオリジナル曲でGmで始まる物憂げな曲だが、最後のコードはEでジャーンと終わる。。。のだが、そのEが弾かれても、余韻を楽しむかのように誰も止まろうとしない。ここからが冒険の始まりだ。キースが「EED#E G#G#F#G#〜」という新しいメロディーを発見して弾き始める。ゲイリーさんは獲物を狙う獣の目だ。そのメロディーが2回繰り返された時、この方向で音楽を進めようというキースの思いはゲイリーさん、ジャックに伝わり、3回目が繰り返された瞬間、ゲイリーさんは「C#」を弾いた。この瞬間、音楽はひとりでに動き出す。そして「A」を弾いた時にそこは楽園と変わった。キースが雄叫びを上げる。音楽が迸り始める!! ここのくだりのカメラワークが素晴らしく、燃え上がって行くキースの表情を追わず、ゲイリーさんの表情の変化を追うというのは何という素晴らしさだ!!だんだん顔が紅潮し、喜びに陶酔して行くのが見て取れる。音楽が作られてゆく様を目の当たりにしている観客は茫然と見るしか無かった。その壮大なエンディングがフッと消えた時、誰もが動けない。拍手、物音一つしない中、「Stella By Starlight」が弾き始められ、神がかったジャックのドラムソロからテーマに戻った瞬間、観客は現実のことだったと気付き大声援が起こる。

これがKeith Jarrett Trio の1番好きな瞬間だ。信じられないドラマだ。

今日はこのDVDでも見よう。ゲイリーさん、ありがとうございました!!ゆっくりとお休みください。



投稿者 石井彰 : 19:34 | その他 | コメント (5) | -

大切なご報告。


2019年の最初のブログがこのような内容になってしまうのが心苦しいのですが、応援くださる皆様にご報告せねばなりません。

私は、『球脊髄性筋萎縮症』という難病を患っています。病気が発覚したのは3年前、血液検査で数値があり得ない高値を示し、大学病院での精密検査により診断されました。この病気は体の筋肉が徐々に動かなくなってしまうという聞くと恐ろしい感じがしますが、この病気が直接の原因となって死ぬ事はありません。誤嚥の可能性が高まり、その為、誤嚥性肺炎を引き起こす事が多いらしいのですが、昨年より誤嚥を防ぐ為の薬が認可され投与しています。病気自体の治療法が現代の医学では無いので、上手く病気に付き合って行くしか手立てがありません。

私の場合、手の震えや指を動かす筋肉の衰えを感じたのですが、それはピアノ奏法や表現方法でカバーできると思い、隠して3年活動してまいりましたが、その心配より、この病気の特徴「四肢近位筋優位の筋力低下および筋萎縮」〜つまり腕や脚の付け根の方から筋肉の劣化が始まる〜この症状の方が、昨年後半より顕著に自覚する様になりました。

それに加え、様々な体調不良が重なり、生活形態、生活リズムを考え直さねばいけない時期に来たと自覚しております。

横綱千代の富士の言葉では無いですが、『体力の限界』〜活動を大幅に縮小せざるを得ない状況になりました。

2月19日に日野皓正さんに事情を話し、バンドを辞めさせて頂く事となりました。1998年の春に加入して以来、20年間お世話になった日野さんのバンドを辞める事は苦渋の選択でしたが、まだまだある自分の将来の生活を考えての決断を致しました。

20年と一言で言うと簡単ですが、自分の人生に於いて、この20年間は50年にも匹敵する意味のある経験だったと思っています。音楽に向き合う厳しさ、人の気持ちを慮り、人を尊重し、自分の意見をはっきり意思表示するという人間にとって大切な事を、これほど強く教え続けてくれたのは日野皓正この人をおいて他にはいません。楽しい事、辛かった事、いろんな想い出がありすぎて整理がつきませんが、日野さんには感謝の気持ちだけでいっぱいです。


今年2019年は元号も新たになる変わり目の年でもあります。自分も新しい人生をスタートさせる年にしたいと思っています。

今後の活動は、自分の体調管理を優先させ、流動的になるとは思いますが、自分のバンドでありますトリオ〜杉本智和(b)江藤良人(ds)、Chamber Music Trio〜須川崇志(vc)杉本智和(b)、親友盟友であります金澤英明(b)石若駿(ds)とのBoysの活動をメインにして行きたいと思っております。

『何かを失う事は、何かを得る事』。この言葉の様に前を向いて行きてゆきますので、どうぞ変わらぬ応援を宜しくお願い致します。

p.s.すでに告知せれています「日野皓正クインテット」の演奏予定のある主催者様、関係各位には大変ご迷惑をおかけする事をお詫び致します。そしてRUN株式会社の田渕等さん、本当にお世話になりました。そしてご迷惑お掛けしますが今後もよろしくお願いします。

投稿者 石井彰 : 17:33 | その他 | コメント (30) | -

私にとってのジャズのルーツ。



『ブルーノート』が今年で閉店!?。。。。

寝耳に水だった。我が母校「大阪音楽大学」がある阪急宝塚線『庄内』に49年間ジャズと美味しいコーヒーを提供し続けてくれた『ブルーノート』が年内をもって閉店。

あれは高校3年の冬、受験の為に音大に通った際、やたらと敷居の高そうなジャズ喫茶があった。寒かったのでホットコーヒーを頂きたく、勇気を出して扉を開けてみた。煙草の煙と眼光が鋭く屈強なマスターの顔。ジャズに対する憧れ、大人になりたい背伸びしたい気持ちで、正直居心地は良くはなかったが試験期間中毎日コーヒーを飲みに立ち寄った。マスターの名前は菅原乙充さん。ここの地で開店するまでは関西では名の通ったアルトサックスプレーヤー。
ママさんは人懐っこく、色々親切に接して下さった。

大学に入学して、ほとんど毎日のように通った。まずブルーノートに寄り、荷物を置かせてもらってから授業に行き、昼休みにはここで弁当を食べさせてもらったり、放課後は必ず寄ってジャズを聴いて帰った。クラシックの大学だったがジャズを好む学生や先生方で毎日賑わっていた。毎年6月には開店日記念セッションというのがあり、ジャズを演奏する先輩達のプレイを憧れの眼差しで見ていた。そうこうしているうちに、大学のビッグバンドに入ったりして自分もジャズピアノをやってみたくなったのだ。ビルエバンスを初めて聴き心酔したのもこの時から。私が2年生になり新入生に井上陽介b、小島勉ds、岡田ケイタdsが入って来て土曜日の午後に練習させてもらうようになった。初めは退屈そうに居眠りしながら練習を聴いていたマスターが、だんだん録音やビデオ録画してくれるようになって来た。

そう、ここ『ブルーノート』は私にとってのジャズの始まりであり、マスターはジャズの父である。

卒業後上京してからもジャズ科創立当時から講師として母校にお世話になることになったので、ずっと通い続けているのだ。教えていた学生達も多数通うようになり、ここでお世話になった。

37年間通い続けるうちに、大学の周りの環境も変わり店もお客さんが少なくなり寂しい近年だったが、11月に大学に行った際に閉店の事を聞いたのだった。。。。

そして発作的に12月12日(水)に最後のセッションを開催しようと決意し、facebookで告知し、大阪在住のブルーノート関係者にお知らせ、呼びかけをし、少しでも多くの人に集まってもらいたいと思ったのだった。
この日がNGでもマスターに会いに行って頂きたいし、別の日にセッションを企画して頂くのも良いかもしれない。

この呼びかけは多くの反響があり、当日には店に入り切らない程の人々が集まり、ブルーノート、そしてマスター菅原乙允さんに感謝の意を伝えた。毎日新聞さんも噂を聞きつけて取材に来てくださり、記事を書いてくださった。そして沢山の想い出に刻まれる写真も撮ってくださった。ありがたい事です!!

ここブルーノートで得たジャズに対する精神や、人との繋がりの大切さ、大きな愛は自分にとっての心の底にずっとある宝だ。ここでジャズに目覚めなかったらどんな人生になっていたのだろう。。。人生に「もし?」は無いが考えてしまうのだった。本当にブルーノート、マスター、多くの友達、先輩方に感謝しかない。

これから大阪音大に行く時にブルーノートに寄れないとは!!!僕は大阪音大のジャズ科の授業で、自分なりにルーツから得ている事を伝えて行ければ。それがブルーノートに対する恩返しだと思っている。

47年間、本当にお疲れ様でした。そして美味しいコーヒーを、大きな愛をありがとうございました!!!

写真が沢山あります。どうぞご覧ください。

スライドショーはこちらから!!




投稿者 石井彰 : 13:11 | その他 | コメント (0) | -

私にとってのソロピアノ。

ソロピアノ。それはピアニストにとって避けて通れない表現方法だ。クラシックでは当たり前の形なのだが、ジャズピアノでのソロとなると、やはり特別である。もちろん昔のラグタイムはピアノソロの為に書かれているし、ストライド奏法もジャズピアノのヴァーチュオーゾ的な伝統でもある。これらはメロディー、ハーモニー、ベースラインを一人でこなさねばならなかった(ベーシスト、ドラマー、メロディ楽器がいない)事による理由もあったに違いない。

近代においてのソロピアノはピアニスト一人だからこそ表現し得ない分野になった。Duke Ellington、Bud Powel、Theronious Monk、Bill Evansらが残した"ジャズ"ソロピアノから、ピアノによる純粋な即興音楽としてのパフォーマンスを確立したのは、Cecil Taylor とKeith Jarrettであろう。彼らはジャズに限らず、クラシックや現代音楽、様々な民族音楽を吸収し、再構築し即興で表現するという未知の領域に踏み込んだのだ。

ジャズ史の勉強的な事はこれまで。ピアノに限らず、ソロの即興音楽というものはとても自由で自分の世界に浸れるという反面、非常にリスクも伴う。そして、強い精神力の持続が求められるのだ。演奏者の心の中の景色が、そして精神状態が丸裸で晒される。

私はソロピアノで一夜を通す場合、一曲を通してというのは勿論、一夜を通しての起承転結、物語性、コントラストなどを「無意識に意識」している。聴衆が経験しているのと同じ事を同時に自分も体験しているわけだ。大げさに言えば、最初の一音を出して、その音を聴き、次に弾くべき音を捨拾選択し、思いも寄らぬ未知の音を求め、その日の最後の音を弾ききるまで続けていく。こういうイメージだ。その日の体調や心の状態、若い頃、歳とった頃、一時も同じ事は無い。自分の今の正直な姿を映し出す鏡の様な物だと思っている。そのナチュラルな自分の姿を認め、受け入れ、楽しむ。

とても良い環境でソロピアノを行うのは、この上ない喜びです。年に一度のソロコンサート、今年は杉並区永福町にある「sonorium」という、とても響きが良く、素晴らしい状態のスタインウェイフルコンサートグランドがあるホールで行います。皆様、今年の私を聴きにいらしてくださったなら幸せです。

今年は前半をSolo Piano、後半をなんと、Chamber Music Trioという二本立てでお送り致します。チェロの須川崇志、コントラバスの杉本智和。この二人も、同じ様な信念を持ち、通じ合える仲間です。

石井彰 Solo Piano&Chamber Music Trio Concert
須川崇志(vc) 杉本智和(b)


10月18日(木) 18:30 open 19:00 start
会場: sonorium 〒168-0064 東京都杉並区和泉3丁目53−16
チケット \4,000(前売り) \4,500(当日)

販売はライブ会場等で私及びメンバーより直接購入頂くか、
synchronicityakira@gmail.com までメールを頂ければ郵送させて頂きます。

投稿者 石井彰 : 00:03 | その他 | コメント (7) | -

ジャズ講座。

昨年出版した『THE JAZZ道 アドリブの扉』(ヤマハミュージックメディア)。ジャズピアノを始めたいけどアドリブ、リズムのノリがわからない〜そのような方を対象に書きました。

この本を使用した講座を開講することになりました。単なる講義ではなく実際にグルーブを体験していただくために、杉本智和(b)石若駿(ds)が講師としてサポートしてくれます。現在の日野皓正クインテットのリズムセクションと共演できるチャンスです!どうぞ体験しにいらしてください!
もちろんピアノ未経験の方でもご参加いただけます。

2016年11月6日(日)11:30開場 12:00開始 2時間を予定
銀座山野楽器 本店7F イベントスペース Jam Spot
受講料 一般 \3,300(税込)ヤマノミュージックパートナーシップカード会員 \3,000(税込)
お問い合わせ/お申し込み 銀座山野楽器 本店3F楽譜フロア
03-5250-1061

投稿者 石井彰 : 13:06 | その他 | コメント (18) | -

Shinjuku Madness


以前、本ブログでも書きましたが、熊本へのチャリティーCDが出来上がりました!!

"激情に駆られし本邦ジャズメンたちが深夜の新宿アンダーグラウンドに集結した一夜の記録

2016年5月5日深夜、新宿ピットイン――4月に発生した熊本地震への支援のために立ち上がったミュージシャンたちによるチャリティー・レコーディング。本CDの収益は熊本地震の被災地へ寄付されます。日野皓正による本企画の為の書き下ろし収録。
★限定3,000枚プレス
★封入特典:レコーディング・セッション風景を記録したフォト・カード・セット

■録音:2016.5.5@新宿PIT INNにて エンジニア:菊地昭紀(PIT INN Music)

メディア掲載レビューほか
2016年5月5日深夜、新宿ピットイン――4月に発生した熊本地震への支援のために立ち上がったミュージシャンたちによるチャリティー・レコーディング。日野皓正による本企画の為の書き下ろし「Kumamono Blues」収録。本CDの収益は熊本地震の被災地へ寄付されます。 " (amazonより転載)


金澤英明(b)、井野信義(b)、吉田美奈子(vo)、秋山一将(gt)、西尾健一(tp)、TOKU(tp)、山田丈造(tp)、津上研太(as)、守谷美由貴(as)、峰厚介(ts)、吉本章紘(ts,cl)、
後藤篤(tb)、本田珠也(ds)、江藤良人(ds)、石若駿(ds)、栗林すみれ(p)、石井彰(p,arr)
という参加メンバーです。

大野明氏による撮り下ろしミュージシャンのフォトカード付き(!!)で、¥2,000です。

店頭発売は9月7日ですが、ライブ会場での販売を開始致します。是非お買い求めいただき、熊本への支援へのご協力を宜しくお願い申し上げます。

遠方でライブに行けない、それまで待てない!!という方は通信販売にも対応させていただきます。このHP内のMessage Boxよりメールをください。


投稿者 石井彰 : 13:35 | その他 | コメント (4) | -

ハイレゾ音源、DVD−R販売のお知らせ。


かねてから色々とご意見いただいております、ハイレゾ音源ダウンロード販売しております『Solitude/石井彰Solo』の件です。

一番多いご意見、「ハイレゾ音源、どうやってやるの?専用機が要るの?」という事案を考えて、DVD−Rにて販売することが決まりました!!

手作りではございますが、私のオリジナルフォトを使ったジャケット付き\2,100です。写真は随時変更していきます。とりあえず今回は3種類のジャケット写真を用意しました。本日から販売致します。

内容は、ハイレゾ音源に加えて、mp3の軽いデータの2種類が入っております。どうぞお買い求めください!

投稿者 石井彰 : 16:43 | その他 | コメント (4) | -

新作案内。

久しぶりの新作のご案内です!!

一つは昨年末に録音したソロピアノです。これは私としては初のスタイルなのですが、ハイレゾのダウンロード配信です。通常のCDには情報量が多いため、パソコンにダウンロード購入していただき、専用の再生プレーヤーで聴いていただくというスタイルです。

私自身がハイレゾ配信ということに関してほとんど無知なので調べてみました。このサイトで見てみると、無料のアプリケーションがたくさんあるようですね。思ったより簡単そうです!

http://mora.jp/help/faq_hires#play_11


さて今回の配信元は「サウンドポイント(SOUNDPOINT)」。録音データは以下です。

2015年12月23日 相模湖交流センター多目的ホールにて録音

Solitude
Embrasable You
TheShadow of Your Smile
Blues
Prelude to A Kiss
Take The A Train
My Funny Valentine

全7曲 一曲300円

演奏:石井彰(ベーゼンドルファーDodel 275)
録音:金田式DCマイク、金田式ADコンバーターを使用
(録音データ:wavファイル、96kHz/24bit)
中村正樹(サウンドエンジニア)

これでもか!?っていうほどのスタンダード集になりました♫ベーゼンドルファーでの録音は初めてかもしれません。独特なサウンドを楽しんで頂きたいです。

どうぞ『SOUNDPOINT』のサイトにアクセスしてお買い求めください!!

http://sound-point.biz/



もう一作品は5年前のライブ盤です。

『DOXY』

アディロンダックカフェレコード
続木力(harm) 吉野弘志(b)石井彰(p)

2011年2月1日 『アディロンダックカフェ』にてライブレコーディング
2,500円(税抜)

ジャケット写真には間宮精一撮影の戦前のNYの風景が使用されています。間宮精一とは、日本のカメラ設計者。「マミヤシックス」というカメラを開発しました。マミヤのカメラは今でも中古市場でよく出回っていますね。今も「フェイズワン」という超高級デジカメに受け継がれています。
間宮氏は写真でも凄腕だったらしく、アディロンダックカフェ店内には素敵な作品も飾られる。興味がある方は行かれてはいかがでしょうか。

こちらの作品はライブ会場でお買い求めいただけます。遠方の方は配送にも対応しますので、本HomepageのMessage Boxよりメールを下さい。よろしくお願いします!!

投稿者 石井彰 : 19:59 | その他 | コメント (6) | -

JAZZLIFE 12月号で。

パリでのテロのニュース。。。。怒りと驚きとやるせない気持ちで一杯です。多くの犠牲者の方々のご冥福をお祈りします。

7年前にパリに渡り、現地のミュージシャンと二日間のライブを行いました。5、6日の滞在でしたが、街を歩き回り、歴史を感じ、文化や芸術を感じ、人との交流を通じて大好きな街になりました。その魅力的な街が惨劇の場になるとは。

イスラム国との対立の詳しい事は私はわかりませんが、宗教上の争いは一言で片付けられないほど複雑なものだと思います。しかし、無限に続くかのような報復に次ぐ報復は避けねばならないでしょう。1日も早くパリに。。。そして、その他にも惨劇が繰り返されている地域の人々に平和な日々が戻るよう祈るしかありません。



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お知らせです。

今日発売の「JAZZLIFE」誌に私が執筆した記事が掲載されています。スタンダード曲の「Stella by Starlight」について書いています。初心者、中級者向けのセッションでの(セッションだけとは限りません。解釈の手助けに)お役立ちアドリブ譜例と解説ですね。自分のプレイした物の採譜したものも書いてあります。よろしければご一読くださいね!!

執筆はほとんどいませんが、ここの所続いています。ヤマハミュージックメディアから出版された「THE JAZZ道 ピアノ編」もどうぞよろしくお願いします。

投稿者 石井彰 : 22:40 | その他 | コメント (2) | -

著書が出来上がりました!!

出来ました!!長い時間をかけて書き、何度も書き直し、校正を重ね、やっとCD付きの本となって手元に届きました。

『THE JAZZ道 アドリブの扉 for PIANO』が、ヤマハミュージックメディアより10月17日に発売となります。初心者向けです。

10曲のスタンダードの譜面、解説、模範CDには杉本智和(b)江藤良人(ds)という私のトリオのメンバーが付き合ってくれています。マイナスワンカラオケで彼らとのセッションが楽しめます。
価格は2,300円+税。全国の楽器店、書店、ヤマハミュージックメディアのHPなどでお求め頂けます。

こちらからも⇩
ザ ジャズ道 アドリブの扉(CD付)for PIANO 商品紹介
ヤマハミュージックメディア(CD演奏もちょっと紹介しています)

楽天

アマゾン



この手の本の執筆は『超絶ジャズピアノ』(リットーミュージック)に続いて2冊目ですが、相当簡単になっています。ジャズの歴史、一般的な理論も独自の解説で「自分はこう考えているよ」という目線で書いています。この部分はヤマハの社内でも好評だということで!!

ジャズピアノ弾く方、ちょっと興味があるけど未経験の方、弾かないけど興味ある方など、幅広く楽しんでいただけるかなと思っています。

どうぞたくさんの人に手にとって頂けますように。。。よろしくお願いします!

投稿者 石井彰 : 12:22 | その他 | コメント (2) | -

皆様に深く御礼申し上げます。

皆様にご報告です。

6月16日の当Blogにて皆様にご協力をお願い致しました、ewe諸作の原盤買い取りに関するドネーションのお願いに対しまして、多大のご好意が集まりました。当初の目標の20万円を大幅に上回るCDの売れ上げとドネーションを頂き、本件の発案者である「Studio TLive Records」代表多田鏡子、そして私もただただ驚きと感動の嵐でした!

ここに厚く御礼申し上げます。本当にありがとうございました。

皆様にこんなに気にかけて頂ける私は、幸せ者です!!地道に音楽をやって来て良かったなあと染み染みと感慨にふけっています。

「Voices In The Night」「presence」「That Early September」「SYNCHRONICITY」「Embrace」の5作品は原盤を守ることができました。ご協力頂いた皆さま一人ひとりのご好意のおかげです。

詳細なご報告は後日、「Studio TLive Records」よりさせて頂きます。これに伴い、サイトでのドネーション受付は本日6月21日を持ちまして終了させて頂きます。


原盤をどのように活かして行くかは未定ですが、私個人的な考えでは、未発表曲を含むベスト盤みたいなものができないかなぁなどと考えております。

いずれにせよ、次のステップに確実に進めるようになった事は大きな喜びです。

皆さまへのご報告とお礼でございました。

投稿者 石井彰 : 02:40 | その他 | コメント (17) | -

皆様にお願いです。

皆様にお願いがあります。唐突ではございますが、お読みいただければと思います。


私は自身の作品5作を、EastWorksEntertainment というレーベルからリリースしております。きっかけは日野元彦さん。このレーベルはいわゆる「インディーズレーベル」でメジャーレーベルと違い、私たちのようなスターではないミュージシャンも応援してくれました。日野元彦さんは無名の若手を積極的に引っ張り上げてくれました。その一つの成果が「Club TOKO」というムーブメントを生み出し、アルバムが製作されました。私は「Double Chant/Club TOKO vol.2」というアルバムに参加させていただきました。曲も3曲提供し、採用されたのも良い想い出です。

これがきっかけで、自分の初リーダーアルバムをリリースすることができました。「Voices In The Night」は一番思い入れが強い作品。その後、4作品をリリースしました。ここ10年程はeweとの繋がりは薄くはなりましたが、これらの作品を仕入れては自分で手売りを続けてきました。

実はこの度、EastWorksEntertainmentは会社存続が困難に陥りました。レーベルが持つ全ての作品の原盤が抵当に入っているため、それらが差し押さえされる前にアーティストに自分のリーダー作品の原盤の買い取りを勧められました。これらが差し押さえられると、作品の所有権が無くなり、作品が幻のものとなってしまうし、ダウンロードなどの収益も行方がわからなくなってしまいます。

そこでまとまった資金が要りますが、私は原盤と全ての在庫を買い取ることにしました。現在お世話になっているレーベル「Studio TLive Records」の多田鏡子氏も援助を申し出てくれて、共有することになりました。

多田氏の提案で、応援してくださるファンの方々に少額のドネーションをお願いしましょうということになりました。

もし協力しても良いよ!という方は詳細を読んで頂ければ幸いに存じます。どうぞよろしくお願いします!ドネーションしてくださった方には、手前味噌で申し訳ありませんが、私が撮影した写真のプリントをお礼にプレゼントさせていただきます。どんな写真が贈られるかはお楽しみです!

ドネーションに関する「Studio TLive Records」のサイトはこちら。

これを機に、それぞれの作品の紹介、解説、想い出などを書いてみたいと思います。


「Voice in the night」 Release : 2001/9/21
石井彰:piano
俵山昌之:bass
江藤良人:drums


1 Angel Eyes/Matt Dennis
2 Snakin' Around/Ray Bryant
3 Setembro/Ivan Lins & Gilson Peranzzetta
4 Greco/俵山昌之
5 I Concentrate On You/Cole Porter
6 Sometime In The Snow/石井彰
7 A.P. /江藤良人
8 Ladies In Mercedes/Steve Swallow
9 Voices In The Night/石井彰

音響ハウスの2stで録音。このスタジオのスタインウェイBはとてもバランスが良くて気に入って弾いたのを覚えています。初リーダー作品の録音という事で大変緊張し、力が入りました。今でも大尊敬するミュージシャンであるIvan Lins、Steve Swallowの作品を取り上げた。そしてメンバーのオリジナル、いくつかのスタンダードを用意してスタジオ入りしました。初日の録音をプレイバックして、明るく軽やかに感じたので、深い沈んだ音を求めて演奏したのが「Angel Eyes」。それが良いテイクとなりアルバムの冒頭に持ってきたのが、その後の自分の進む道を暗示しているように響く。
このアルバムをNYでIvan Lins本人に会って手渡し、数年後に東京で会ったときに、このアルバムの事を覚えていてくれて、「Setembro」の演奏を大変気に入ってくれた事が最高の想い出!!

「presence」 Release : 2002/4/21
石井彰:piano

1 If You Could See Me Now (Carl Sigman & Tadd Dameron)
2 Bloom In The Darkness (Akira Ishii)
3 The Man I Love (George Gershshwin)
4 Intercouse Of Mind (Akira Ishii)
5 Estate (Bruno Martino)
6 A Day Out Of Time (Akira Ishii)
7 A Precious Presence (Akira Ishii)
8 Maos De Afeto (Ivan Lins & Vitor Martins)
9 Create Quite A Stir (Akira Ishii)
10 Straight No Chaser (Thelonious Monk)
11 Don't Explain (Arthur Herzog Jr. & Billie Holiday)
12 Fonte Des Neiges (Akira Ishii)

音響ハウス1stにて録音。スタインウェイDのフルコンを使用してのソロアルバム。録音曲目を全く決めずにスタジオ入りし、即興的に決めて弾いた。オリジナル曲も全てインプロヴィゼーション。確か沢山曲を弾いたのだが、アルバムを通して四季の移り変わりを感じて欲しいと選曲、曲順を考えたのでした。Ivan Lins曲のカバーも続けたいとの決意。

「That Early September」 Release : 2002/8/21
石井彰:piano
スティーヴ・スワロウ:bass

1 solar (Miles Davis)
2 lover man (Jimmy Davis & Roger “RAM” Ramirez & Jimmy Sherman)
3 walk by my own(Akira Ishii)
4 Dick called “BOP”(Akira Ishii)
5 happiness(Akira Ishii)
6 peau douce (Steve Swallow)
7 dark glasses(Steve Swallow)
8 alone together (Howard Dietz & Arthur Schwartz)
9 amazing (Steve Swallow)

このアルバムにまつわるエピソードは尽きない。忘れもしない2001年8月末。小林桂(vo)のブルーノート公演の為、ニューヨークへ渡り、そのまま一人滞在し続けてスティーブさんとのレコーディングを果たす事が出来た。。。。のだが!! 
帰国した翌日の9月11日に、あの「同時多発テロ」のニュース。信じられない思いでテレビの前から動けなくなった。スティーブさんとすぐに連絡は取れて、無事を喜んだのだが、同行したディレクターは半月連絡が取れずに心配した。この事がアルバムタイトルになったのだ。
この時のブルーノート公演の翌日からIvan Linsがブルーノートに出演していて、聴きに行き、面会もできて「Voices〜」のアルバムを直接手渡せたのも奇跡的だった。
そして何よりスティーブ・スワロウさんの人柄、プレイに痺れて感激の涙をしたのだった。「Happiness」というオリジナルを物凄く気に入ってくれて、「帰ってから良く研究する!」と言って譜面を持って帰ってくれたのも嬉しかった。

「SYNCHRONICITY」 Release : 2003/4/21
石井彰:piano
俵山昌之:bass
江藤良人:drums


1 Sublimation/石井彰
2 Everything I Know/石井彰
3 I'm All Smiles/Michael Leonard
4 Saindo de Mim/Ivan Lins
5 Synchronized Step/石井彰
6 The Rainy Day/江藤良人
7 Rion's Sound Of Love/俵山昌之
8 Just In Time/Jule Styne
9 Walk By My Own/石井彰

音響ハウス1stにて録音。トリオのサウンドもまとまってきて新たな挑戦をと意気込んだ作品。私の最新作「Endless Flow」で「Synchronized Step U」という曲を演奏したが、こちらでの演奏が第1作。9拍子のベースパターンと幾つかのメロディーの断片だけを指示し、あとの展開は自由にという冒険をしてみた。今後このコンセプトを発展させ続けることになる訳ですが。オリジナルをたくさん書くようになった頃。相変わらずIvan Lins作品のカバーは続けて、このアルバムも本人に渡して聴いてもらい、ビッグハグで喜んでもらったのも幸せな想い出!

「Embrace」 Release : 2004/4/21
石井彰:piano
俵山昌之:bass
江藤良人:drums


1 Embrace/石井彰
2 Aos Nossos Filhos/Ivan Lins
3 Chaotic Silence/石井彰
4 Lullaby fo Peace/石井彰
5 Capriccio/石井彰
6 Fortune-teller/石井彰
7 Misterioso/Thelonious Monk
8 Eternally/石井彰

音響ハウス1stにて録音。トリオ作品の第3弾。レコーディング日程は決まっていたものの、曲が全く書けずに日野皓正(tp)バンドのツアーに出る。名古屋での丸一日オフがあったのでピアノスタジオをレンタルしておいて少し書けたらな〜くらいの気持ちでオフ当日を迎える。朝のニュースで、ある母親が自分の子供が再婚相手に殺されるのを、嫌われるのが怖い為に子供を見殺しにした〜というのを見て、なんとも遣る瀬無い気持ちになりスタジオに入り衝動的に一気に6曲書き上げた。あまり良い動機ではなかったのだが、書かずにはいられなかったのだ。当時、このエピソードをブログで書いた時に、あるファンの方から「そのような音楽は聴きたくないです!」という辛辣なメールを頂きましたが、正直に気持ちを書き返信したところ、良き理解者となってくださり、現在も応援してくれているという嬉しい事件がありました。Ivan Linsカバーも意地のようになりました(笑)

そして忘れてはならないのがアルバムジャケットの素晴らしいフォト!!この5作品とも有名なフォトグラファーの内藤忠行さんの作品を使用させて頂いています。最初の「Voices in the Night」のカバーフォトを決める際に内藤さんのスタジオに初めてお邪魔した。あらかじめ音を聴いて頂いて、確か5枚の写真が用意されていた。そこで開口一番「お前ならどれを選ぶ?!」と鋭い眼光で尋ねられた。そして「これです!」と指差したのが採用された月の写真。先生一言「よし、合格!」と、ニッコリされた。今考えると、正解が決まっていた訳でなく、優柔不断にならずに自分のイメージを絞り切れるか試されていたんだと思います。その後は作品ごとに内藤さんが自ら一枚選んでくださり、全ての作品に彼の素敵なフォトを使用させて頂きました。これも大切な財産だと思っています。

投稿者 石井彰 : 00:36 | その他 | コメント (191) | -

最近の。。。


最近の日課は、散歩をしながら写真を撮る事。

目の前にあるのだが気が付かない新しい発見や、知らない道を歩き写真に切り取っていくと楽しい時間と散歩の距離はあっという間に過ぎ去る。

お金もかからず健康的!(笑) 最高の趣味です!!

最近の散歩やライブの様子をこちらから見られるようにしています。どうぞお楽しみください!

https://box.yahoo.co.jp/guest/viewer?sid=box-l-pvydilj7re5b3yqs6r5iz56zrq-1001&uniqid=0e1073ec-f425-4030-b6d0-f89c8512dbe8

スライドショーはこちら

https://box.yahoo.co.jp/guest/slideshow?sid=box-l-pvydilj7re5b3yqs6r5iz56zrq-1001&uniqid=0e1073ec-f425-4030-b6d0-f89c8512dbe8

ランダムですが、4月29日から5月9日までの記録です。

投稿者 石井彰 : 03:04 | その他 | コメント (2) | -

井上淑彦さんへ


テナー&ソプラノサックス奏者  井上淑彦。

初めて彼の名前を知り、コンタクトを取ったのは、約25年前の事。大阪音楽大学を卒業して、大阪でプロとして活動していた頃。

音大の盟友、井上陽介(p)、岡田佳大(ds)そして先輩ピアニスト西村和彦さんが淑さん(と呼ばせてもらいます)のバンドで来阪するという事を聞いての事だった。一緒に研鑽し合っていた友人が次々上京し、こちらは出遅れて悶々としていた矢先に、東京の若手の気鋭のサックスの人のバンドで一堂に凱旋ライブに来る。。。

しかも、まだ聞いたことも会った事もない井上淑彦という人物から直接直筆の手紙を頂き、大阪のライブを行いたいので、出来そうなお店をブッキングしてくれないかということだった。

確か、2軒口利きをしたんだと思う。そして半ば複雑な思いでライブにでかけたのだった。

私が1991年に上京しても、淑さんとは演奏する縁には恵まれなかった。初共演は極最近、6,7
年前くらい、横浜『上町63』での事。初めてデュオで演奏し、そのファイヤーと切なさを併せ持ったプレイとオリジナル曲に魅了されたのだった。そして、ファーストコンタクトのエピソードをお話しした時の気まずそうな笑顔で「覚えてるよ。その節はありがとう!」と言ってくれたのを忘れない。

その後、何度も共演するようになり、事あるごとに興味深いセッションに誘っていただいた。京都『RAG』での東原力哉(ds)市野元彦(gt)との珍しいセッション、沼田『So What』での竹内直(ts)とのツインサックスセッションは鮮明に記憶に残っている。

そして念願のバンド結成。北浪良佳(vo)とのトリオ『Sarasvati』だ。アレンジは最小限、その時その時のインスピレーションでスタンダードもインストバンドのように柔軟に組み立ててゆくという手法は新鮮だった。このバンドも北浪良佳の渡米で休止中。

一番最近では金澤英明(b)石若駿(ds)とのBoys Trioとの共演。凄まじいフリー演奏になった。またやろうと再演を約束したな。この時の録音があるはずだな。


3月25日、井上淑彦氏逝去。享年63歳。

昨年秋に食道癌の治療の為、しばらく活動を休止しますという知らせが入り、お見舞いのメールのやり取りが最後のコンタクトとなってしまった。快方に向かっているという情報があったので楽観していた矢先の事だった。

熱いのだけど決して崩壊はしない美意識。ファンタジー溢れるオリジナルのタイトル。お酒と煙草をこよなく愛する。いつもかっこよかった。『ジェントルマン』という言葉がぴったりだった。

ツアー先のBarで流れていたジャクソン5の『I'll Be There』を聴いて、「この曲、本当に好きなんだ」と、ポロポロ涙をこぼしていた姿。
やはり名古屋ツアーでモンゴル料理やさんに連れて行ってあげたらハマってしまい、その後も一人でも何度も通っていたらしい事。一人でもモンゴル衣装着て羊食ってたんだろうか?
『アンジュール』というオリジナル曲を演奏した際、「この絵本がアンジュールなんだよ」と、おしゃれな絵本を持ってきて見せてくれた淑さん、後日「あのアンジュールの絵本がなくなっちゃったんだ」と悲しい顔で残念がってた。見つかったんだろうか?

こんなお茶目なというか、超ピュアな人間性が表れたエピソードが次から次へと思い出される。
硬派な反面、いつまでも少年のような心を持った人。それが淑さんだった。


死は誰にでも平等に訪れるとは言え、早すぎます。急すぎますよ、淑さん。もっと一緒にやりたかったじゃないすか。

「石井君のバッキングは何を吹いても嘘にならないような不思議なサウンドがあるから一番好きなんだ」と、お世辞かもしれないが言ってくれた事、忘れません。横浜『ドルフィー』で撮った写真を本当に気に入ってくれて、『HPで使うからくれないか?』というので差し上げたら、本当にトップページで使ってくれて、なんだか照れくさくて嬉しかったです。

短い間でしたが本当にありがとうございました。どうぞ安らかにお眠り下さい。淑さんの事は忘れません。『ずっと。。。』

投稿者 石井彰 : 03:27 | その他 | コメント (10) | -

奈良の飛鳥へ。

9/28の日曜日はオフ。もの凄く良い天気なので(悪くても行くなあ)奈良へ見仏。初めての地、飛鳥へ。6世紀から栄えた仏教文化の中心地。大化の改新をはじめ、古代史の重要な足跡が多数眠っています。

まずは當麻寺。中将姫伝説の舞台となるお寺。若くしてこの寺で出家した中将姫が一晩で織り上げたと言われる曼荼羅図が本尊という変わった形。4m四方の美しい極楽世界が、これまた美しい須弥壇に祀られる。金堂には国宝の弥勒菩薩塑像が本尊、不動明王が御前立ち、四天王像が四方を守る形。白鳳時代の素晴らしい像の数々!講堂には鎌倉期の阿弥陀如来をはじめ、珍しい妙どう菩薩(字が変換できません)などが。キンモクセイの香りがほのかに漂う、とても静かで落ち着くお寺でした。

そして、近鉄橿原神宮前からレンタサイクルで飛鳥を自由に走り回るという作戦。まずは日本最古の飛鳥大仏がある飛鳥寺。推古天皇が聖徳太子、蘇我氏らと発願し、止利仏師により造られた銅像。面長で高い鼻は、とても特徴的。その他、阿弥陀如来座像、聖徳太子孝養像などが祀られる。堂内撮影が自由なのはとても嬉しい!

次は岡寺へ。自転車を途中で止め、心臓破りの急坂を登ってやっとたどり着く。ここは厄よけ信仰として有名で、本尊に日本最大、最古の塑像の如意輪観音が。一般的に言う如意輪観音とは形が違うが、目を大きく開けて力強い光を放っている。

そして本日の締めは『石舞台古墳』へ。横穴式石室を持つ方形墳。上部の封土が失われ、天井石が露出している形だ。蘇我馬子の墓ではないかと言われているそうだ。古代に思いを馳せて夕日に照らされる無骨な形の石を飽く事無く見続けたのでした。

投稿者 石井彰 : 01:19 | その他 | コメント (4) | -

JAZZTOKYO、AIR DO


とてもマニアックで興味深い、ジャズ、クラシック、即興音楽などに特化したサイト『JAZZTOKYO』において、私のインタビュー記事が掲載されております。

トップページからいきなり私の写真が出てくるので、少々ビックリしましたがありがたいことこの上なく!!

懇意にさせていただいているライターの望月由美さんの手による素晴らしい文章と写真が数点あります。私自身が読んでいて、自分の半生を顧みる事が出来て嬉しかったです。大変な記念になりました。

皆様、是非ご覧頂ければと思います。そして興味深い記事が多数掲載されておりますので、今後とも要チェックですよ!!

http://www.jazztokyo.com


そして、もう一つ告知です。

年内に北海道にご旅行の計画がありませんか?そんな時は『AIR DO』がオススメ!!早めに予約すればメチャ安いですし、それに機内オーディオプログラムでは、私の演奏する曲も!!

10月11月と機内オーディオプログラムで、私が演奏する『Saindo De Mim』が選ばれて流れております。これはずいぶん前のアルバム『Synchronicity』(ewe)に収録されているIvan Linsの曲。俵山昌之(b)、江藤良人(ds)という初代トリオのメンバーでの演奏。このカバーバージョンはIvan Linsさんご本人にも直接CDを渡して聴いて頂いて大層気に入ってもらったという嬉しい想い出の曲です!

北海道行くなら『AIR DO』ですよ!!

投稿者 石井彰 : 11:16 | その他 | コメント (1) | -

冬の十勝2014


十勝帯広『ジョイイングリッシュアカデミー』での演奏、その翌日は楽しみにしていた撮影大会!ライブの主催者であり、ジョイイングリッシュアカデミーの校長先生の浦島久さん、十勝在住の重鎮写真家の戸張良彦さん、写真家辻博希さん、2013年日本写真協会賞・新人賞受賞の写真家・由良環さん、京都から立命館大学の坂田教授、素晴らしいアマチュアカメラマン仁平寿枝さん、カメラ屋さんの岡田良博さん、女医さんの佐藤みちるさんの計9名での早朝5時からのスタート。

気温マイナス20℃の極寒だからこそ見られる霧氷を見にまずは更別へ!真っ暗な地平線が少しずつ赤みを帯びて来る。明るくなって来るにつれ、霧の様な氷の煙が見えて来る。幻想的な風景に寒さも忘れる。

次は旭浜にトーチカを撮影に行く。「トーチカ」とは、ロシア語で「点・地点」の意味で、軍事的には重要な地点を守るためコンクリートなどで固めて造った小型の防衛用陣地である。大樹、広尾、浦幌など太平洋沿岸にあるトーチカは太平洋戦争末期の昭和19年(1944年)5月、第7師団(通称熊部隊)の「沿岸築城整備要領」に基づき第31警備隊及び第32警備隊が、米軍の本土上陸に備えて構築に着手し同年12月までに数多くのトーチカを作ったものである。実際には使用される事無く終戦を迎え、そのままの形で海岸に取り残されている。70年の歳月、ここでじっと来る事の無い敵に備えてじっと待ち続けるトーチカ。あっけらかんとした空虚さが漂う空間。

広尾町の海岸沿いに凍った滝があるというので行ってみる。フンベとはアイヌ語で鯨の事を言うそうです。この滝は川があって流れ落ちるタイプでは無く、岩肌から地下水が吹出しているのでとても珍しい。その水が凍って色々な奇怪な形状に重なり合う。氷の鍾乳洞のようでもある。

そして次は屋内撮影。。。。?なんと十勝で円空仏を拝めるとは。。。!曹洞宗龍雲山禅林寺に小さな手のひらに乗る程の観音像。禅林寺年表には寛文六年六月のこととして、 「松前藩家老蛎崎蔵人が、主君の安泰を祈り、トカチ明神社に、円空作観音像一体をトカチ大明神本地仏として奉安す」 とあり(同『しおり』)、円空が松前藩家老に深く信頼されていたことがうかがえる。お寺の奥さんが気軽にお厨子から出してタオルに包んで明るい所まで持って来てくださっての撮影となった。プリミティブ感満載!!

この日の最後に訪れたのは帯広美術館に於いて行われていた『道東アートファイル2013』の最終日。写真家の戸張良彦氏も7名のアーティストの中に選ばれており、ダントツの存在感ある作品群でした。師匠、流石です!!無駄を極限まで削り取り、シンプルであり奥深く想像力をかき立てられるのだ。

翌日は空港に送ってもらう途中に少し撮影。十勝帯広と言えば広大な畑と防風林。いまテレビのコーン缶詰のCMでもやってますね。冬には畑が一面雪原となり、防風林自体がアートのように見える。更にその場所を舞台にアート展をやってしまっているのを見学に。北海道ならではのスケールの大きな企画!!

今年も十勝を思う存分堪能して来ました。もう来年が楽しみです!!

投稿者 石井彰 : 02:26 | その他 | コメント (42) | -

2014謹賀新年


皆様、明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いします。

昨年クリスマス後も、二つのトリオのライブ、日野皓正バンドの仕事納めの大阪ライブ、少し変わったレコーディングと、忙しい年の瀬でございました。今年には発表できることが色々ありそうです!

元旦の今日は、『一年の計は元旦にあり』ということで、地元相模国の日向山霊山寺へ初詣へ。山を歩くとひっそりとおわす日向薬師宝城坊。重文の薬師如来は鉈彫りの行基菩薩作。立派な四天王、十二神将、阿弥陀如来、薬師三尊と鎌倉期の名品ぞろい!地元にも素晴らしい自然と古刹があり、ちょくちょくお参りしたいです。かなりな運動にもなりますしね!

今年は健康に気を配り、マイペースでがんばりたいと思います。

今月は、金澤英明(b)との九州デュオツアーから始まります。そのあとは昨年に引き続き、古野光昭(b)Full Notes with 寺井尚子(vln)での学校公演ツアーで東北〜北海道を廻ります。ですので、都内でのライブがありません。2月からはまた自分のトリオ、カルテットの演奏再開です。レコーディング後半も控えておりますので気合い入れて行きたいと思います。

皆様、幸多き一年となりますように!!

投稿者 石井彰 : 22:41 | その他 | コメント (2121) | -
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