私にとってのソロピアノ。

ソロピアノ。それはピアニストにとって避けて通れない表現方法だ。クラシックでは当たり前の形なのだが、ジャズピアノでのソロとなると、やはり特別である。もちろん昔のラグタイムはピアノソロの為に書かれているし、ストライド奏法もジャズピアノのヴァーチュオーゾ的な伝統でもある。これらはメロディー、ハーモニー、ベースラインを一人でこなさねばならなかった(ベーシスト、ドラマー、メロディ楽器がいない)事による理由もあったに違いない。

近代においてのソロピアノはピアニスト一人だからこそ表現し得ない分野になった。Duke Ellington、Bud Powel、Theronious Monk、Bill Evansらが残した"ジャズ"ソロピアノから、ピアノによる純粋な即興音楽としてのパフォーマンスを確立したのは、Cecil Taylor とKeith Jarrettであろう。彼らはジャズに限らず、クラシックや現代音楽、様々な民族音楽を吸収し、再構築し即興で表現するという未知の領域に踏み込んだのだ。

ジャズ史の勉強的な事はこれまで。ピアノに限らず、ソロの即興音楽というものはとても自由で自分の世界に浸れるという反面、非常にリスクも伴う。そして、強い精神力の持続が求められるのだ。演奏者の心の中の景色が、そして精神状態が丸裸で晒される。

私はソロピアノで一夜を通す場合、一曲を通してというのは勿論、一夜を通しての起承転結、物語性、コントラストなどを「無意識に意識」している。聴衆が経験しているのと同じ事を同時に自分も体験しているわけだ。大げさに言えば、最初の一音を出して、その音を聴き、次に弾くべき音を捨拾選択し、思いも寄らぬ未知の音を求め、その日の最後の音を弾ききるまで続けていく。こういうイメージだ。その日の体調や心の状態、若い頃、歳とった頃、一時も同じ事は無い。自分の今の正直な姿を映し出す鏡の様な物だと思っている。そのナチュラルな自分の姿を認め、受け入れ、楽しむ。

とても良い環境でソロピアノを行うのは、この上ない喜びです。年に一度のソロコンサート、今年は杉並区永福町にある「sonorium」という、とても響きが良く、素晴らしい状態のスタインウェイフルコンサートグランドがあるホールで行います。皆様、今年の私を聴きにいらしてくださったなら幸せです。

今年は前半をSolo Piano、後半をなんと、Chamber Music Trioという二本立てでお送り致します。チェロの須川崇志、コントラバスの杉本智和。この二人も、同じ様な信念を持ち、通じ合える仲間です。

石井彰 Solo Piano&Chamber Music Trio Concert
須川崇志(vc) 杉本智和(b)


10月18日(木) 18:30 open 19:00 start
会場: sonorium 〒168-0064 東京都杉並区和泉3丁目53−16
チケット \4,000(前売り) \4,500(当日)

販売はライブ会場等で私及びメンバーより直接購入頂くか、
synchronicityakira@gmail.com までメールを頂ければ郵送させて頂きます。

投稿者 石井彰 : 00:03 | その他 | コメント (5) | -
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