Jazzピアニスト石井彰(Akira Ishii)の気まぐれな日記Blog Bill Evans
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葉月。
音楽家としての活動を始めて40年近く経つが、これほどまでに時間に余裕があるのは初めてではないかな。昨年今年と人生の転換期であると思えるような事が次々と自分に押し寄せている。
持病である「球脊髄性筋萎縮症」と宣告されて8年。嚥下力低下防止の薬の投与以外はこれといった治療がないので、筋力保持の為の日々のリハビリを続ける毎日。進行は遅いのだとは思う。気をつければ日常生活は普通に送れるのだからラッキーです。けど、不注意というか病気の為、膝が抜けて転倒が怖いのだ。
4年ほど前には高い段から後ろ向きに転倒した事がある。その時、背中にソフトケースに入ったキーボードを背負っていたので、それがクッションとなって後頭部を直接打つのが避けられた。肋骨を1本折るに留まった。3年前にはコンビニの前で足がもつれ肩から転倒し鎖骨をポッキリと折った。この2月は階段昇っている途中で膝が抜け、頭から落ち瀕死の重傷を負った。
こんな目に何回も遭いながらも、こうして生まれて60回目の夏を過ごせているのは超ラッキーな事!!!
儲けものの人生だ。
前置きが長くなってしまいました。今回の事故で生まれて初めて手術を2回も経験し、40日の入院生活があった。音楽家としてピアニストとして、これからやって行けるのか、何をやって生きて行けばいいのか、めちゃくちゃ考える時間があった。そして、いくつかこれからの人生の新しいビジョンを思い描いている。
また長い模索の期間が要るようだが、後ろ戻りすることはあり得ないのだ。とことんやって失敗したのならまた違う事を考えれば良い。それだけのことだ。
やっと本題。
僕はジャズを志すきっかけとなったのは18歳の頃、Bill Evansに出会ってからだ。その衝撃は凄まじく、
若気の至り、バカな10代の脇目もふらず突っ走り、目標は「Bill Evansになる事!!」だった。アホやなwww
演奏の経験を重ねて行くと真似しているだけではただのアホだと気づく。いったんBill Evansを聴いたり研究するのをやめた。Keith Jarrettに出会ったり、Bud Powell,Phineas Newborn Jr,Duke Ellington,Hank Jonesなどの黒人ピアニストにも目が向き始めた。無節操と言われるかもしれないが、自分がグッときた物を貪欲に求めた20代前半だった。そして上京。
オリジナリティを追求し、作曲も始めたり、同年代の仲間達との切磋琢磨、大先輩からの薫陶を受け刺激的な音楽生活だった。そして、日野皓正さんと出会い、音楽を通して人間としての大切なことを考えるようになる。内面が無いのに上辺の事ばかり追求しても意味が無いんやなと。
それから自分の音楽観はどんどん変化して行ったように思う。
数年前に映画「Time Remembered」が日本上陸して小さな映画館で上映された。Bill Evansのドキュメンタリー映画だ。そこでの演奏、つまり映画館で上映後のスクリーンの前でライブをするのだ。こんなプレッシャーはない!!Bill Evansはいくらやろうと思っても自分の中から追い出す事はできない。だからこそ、ライブハウスで「Evans特集」的なものはやらないようにして来た。思い出せば1回はある。そういう時は、普段ないほどの沢山のお客さんが来る。僕のせいじゃあない。Bill Evansの人気があるだけだ。その人気にあやかって「Plays Bill Evans」をやるのを自制してきた。もう何十年もだ。忘れていたのだ、、自分のルーツを。
映画後の演奏の仕事を頂き、向き合わざるを得なくなった。Bill Evansも自分の内面と向き合い魂の音を奏でていた。当たり前のことを再認識することとなった。若い頃に聴いていたが聴こえていなかったBill Evansの内面にやっと近づけたような気がした。
僕のこれからの人生でやらなければならないと勝手に思っていることの一つは、Bill Evansを真正面から向き合うことだ。当然だがBill Evansの音楽を奏でるのは難しい。精神的にもテクニック的にも。
病気のおかげで筋肉の動きはコントロールが効かなくなって来ていて、自分のテクニックは半分以下だ。
元々テクニシャンがウリのピアニストではないので(笑)相当ヤバい。。。それは十分自覚しているのだ。
だからこそ、この事を思い付いたのだ。人生、後悔しないようやれる事はやっておこう!!
という長い経緯を書きましたが、題して『Bill Evansとの対話』というソロでのライブをシリーズで毎回お題を決めて行います。何回続くかはもちろんまだ未定ですが。。
第1回目は9月7日(土)。場所は世田谷用賀の「工房花屋」さん。全面的に賛同して下さりました。
第1回目のテーマは「Billが愛した人達」。このタイトルから色々と想像が膨らむ事と思いますが、ここでは明かさないようにしましょう。自らの考察も含めて興味深いマニアックかつ面白いエピソードも。
この企画を発案してからBill Evansの聴き方もより深くなったようです。
石井彰 Solo Piano 『Bill Evansとの対話』 vol.1 「Billが愛した人達」
9月7日(土) 16:00 start 16:00 start music charge \4,000
『工房花屋』
世田谷区上用賀5-8-11
03-3700-0872
hanaya5811@gmail.com